プチオンリーの主催に礼を尽くせと思った話


今から3年前の話になる。もうそろそろ時効だと思うのでずっとモヤモヤ思ってた事を書く事にした。

ここからは女性向けの同人の話になる。特に用語の解説は入れたりしないので、わかる人にだけ読んで頂けたらと思う。


その当時、私がいたジャンルの自カプのプチオンリーが開催される事になった。
主催は数名で共催という形だった。
そのうちの一人はそのカプの一番人気の描き手さん。
そこまで積極的に同人誌を出したりはしていないが、本を出せばイベントで即日完売。
ツイッターに絵を上げればカプ者が一斉にRTをし、ハートを飛ばす位人気の方だった。(当時は☆だったが)

その方がサイトやチラシのイラストを担当し、主催のメインとして動いているようだった。
他の主催の方達も、カプ一番人気の字書きさんだったり、カプの黎明期から活動している方など、このカプといえばこの方達!という方達が集まり、クラスタは「ついにこのカプでプチオンリーが…!しかもこの方達が満を持して…!」と沸き上がっていた。
私ももちろん、プチオンリーの開催にとても喜んで参加するつもりでいた。

プチオンリー開催発表から数週間後、主催からプチオンリーで発行するアンソロの執筆依頼のメールがきた。
ありがたい話ではあったが、私は少し考えた。
なぜなら以前いたジャンルで、アンソロ企画が乱立し、私も複数のアンソロ企画から執筆のお誘いを受けた。
当時の私は、話を貰った事自体が嬉しくてホイホイ受けていたら、アンソロ原稿だけで手一杯になり、個人誌を落としてしまったのだ。
それでは自分の同人活動が本末転倒だと思い、それからは知人の主催のもの以外はお断りしようと決めたのだった。

そういった経験もあり今回はどうしようかと考えたが、一応主催数名とツイッターは絡みは無いが繋がっているし(相互になった時に挨拶はした)、
何より自カプのプチオンリーが盛り上がるのなら、少しでもお手伝いできれば、ただサークルとして参加するより記念になれば、と引き受ける事にした。

ちなみに、執筆依頼のメールは突然のメールを詫びる文から始まり、原稿要項、謝礼は完成本一冊と気持ちばかりになる事、返事はいついつまでに欲しい事、あとは私の過去の本の感想が書いてあり、ここのこういう所がよかった、こういう理由で執筆をお願いしたいという文章がとても丁寧に綴られていた。

今まで結構な数のアンソロの依頼を受けた事もあるし、私自身、以前のジャンルでアンソロを発行した事があるので、このメールはテンプレ通りの百点満点だと思った。
(執筆依頼のメールに型破りはいらないと思っているのでこれは褒め言葉だ)

この時は本当にありがたい話だと思いながらアンソロ原稿から個人誌の作業のスケジュールをたてた。


それから数ヶ月後、そろそろアンソロの原稿を始めようかと思っていた頃、主催から一通のメールが届いた。
内容は「プチオンリー当日に行なうシールラリーの景品となるグッズのイラストのひとつを手伝って欲しい」というものだった。
景品のひとつのお皿のイラストを描いて欲しいという内容だ。
この依頼は正直悩んだ。
理由のひとつが、グッズの作業が入ると、アンソロや個人誌の作業が押してしまう。
二つ目の理由は、私のイラストに需要があるのか?という事だった。

私のイベントでの配置は大体毎回誕生席か島角だ。
よっぽど壁に行く大手がいない場合に、繰り上がりで壁になった事が数回あったレベル。(それも緩衝材扱いだったと思う)
イベントでは毎回頒布物が瞬殺完売など起こることもなく、おそらく皆、お目当てを4、5スペース回ってからやってきてくれるようなサークルだった。
実際イベント開始〜30分位はいつも暇で、自スペースのピークは開始30分〜1時間後くらいだった。
それなりに本を読んでくれる人はいる。
でも一番に、絶対に欲しい人の本ではない。
もしも何か間違いがあって開始30分で本が完売しても仕方ない、そういうレベルのサークルだと私は思っている。
でもそれでも読んでくれる人がいるだけでありがたい、別に一番を目指しているわけではないのだから、と私自身は楽しく同人活動をやっている。

そういうわけで、新刊は毎回だいたい余る。
「新刊完売しました!」と報告するのは人気のあるサークルのようで気持ちいいし、きれいに捌けるのはやっぱり達成感のようなものを感じる。
しかし一日だけで完売してしまう発行部数はどうかと思うので(人それぞれ事情はあるが少なくとも私自身の本はそう思う)毎回在庫ができるのも仕方ない事だと割り切っていた。
でもそれは自スペースでの話であり、人様の主催するプチオンリーとならば話は別だ。クラスタみんなが楽しみにしているプチオンリーで、私のようなプレミア感のない描き手がグッズの絵を担当してもいいのだろうか…
アンソロは別だ。プレミア感のない私でも、他の執筆者が素晴らしければ賑やかしとして貢献できる。(もちろん全力で考えたネタを今自分が出せる最大の画力で原稿はやるが)

そう悩みはしたが、私に依頼してくれたという事は、少なくとも主催の最低ラインは超えて評価して貰えているのでは?という考えに至った事と、私以外にも神絵師を含め、素敵な描き手さんが数名グッズのイラストを担当するという事、景品ならば売れ残って主催者に在庫として負担をかける事はないだろうと思い引き受ける事にした。

単純に私を必要としてくれるという事も嬉しかった。

勿論、引き受けたからには全力で作成した。
自分の中の引き出しを全部開けてカプ者が喜んでくれるような構図と色のパターンのレイアウトを主催にいくつか提出し、何度かメールで主催と打ち合わせをし完成させた。
この景品が当った方が喜んでくれるといいなと思いながら作った。
アンソロと個人誌の原稿スケジュールは押すが、個人誌を頑張れば調整できる範囲だった。


グッズのイラストを提出してちょっとしてから、別のオールジャンルのイベントに参加する日があった。
その日、主催のメインの神絵師ともう一人の主催二人がスペースまで挨拶にきてくれた。
グッズのイラストのお礼と、アンソロ原稿もよろしく頼むという旨を丁寧に挨拶してくれて、差し入れにお菓子をいただいた。
差し入れの内容は大袋のカントリーマアムと飴玉を可愛い小分けの袋に入れた物だった。
私もアンソロを主催したとき、参加してくれた時に事前のイベントで挨拶に回ったな、菓子折り用意したな、と思い出しながらカントリーマアムをいただいた。


それから遅れる事なくアンソロの原稿を提出し、個人誌の原稿もかなり頑張って予定より早めに脱稿の目処がついてきた。
あとは効果トーンとちょこちょこ修正だけだから、イベント前の最後の土日、土曜日は連日の原稿の疲れを取る為に休憩日にして、日曜とあとの平日仕事から帰ってからの作業でも充分締めきりには間に合うな、などと計算する位余裕だった。
余裕を感じながらツイッターを眺めていると主催の神絵師のこんなツイートが流れてきた。

「明日の土曜日、うちでプチの作業手伝ってくれる人募集〜!」

プチオンリーのアカウントではなく、神絵師個人のアカでのツイート。
身内にむけての空リプのようだった。
主催はここから細かい作業が大変なんだろうな…などと思いながら眺めていたら、友人B子(仮名)から連絡がきた。

「神絵師さんのおうちで明日プチオンリーの作業のお手伝いをしない?」

B子はこのジャンルよりずっと前からのつきあいで、同人関係なく遊びに行ったりする仲で、いわゆる私の身内と呼べる友人だった。
たまたまこのジャンルではカプも被り、このプチオンリーのアンソロにB子も執筆していた。
そしてB子は主催の神絵師の大ファンだった。

憧れの神絵師の自宅で作業のお手伝いをすれば少なくとも今よりお近づきになれる。
でも一人で神絵師周辺の身内に入っていくのは少し怖い。
そこで一緒についてきてくれないか、という理由だ。
正直私は原稿疲れもあって休みたかったが、B子の気持ちもわかる。
私もこの前、推しキャストの握手会に一人で行くのが寂しくてB子についてきてもらったしな…ここは持ちつ持たれつだよな、と神絵師のうちに行くのを了承した。
主催グループも是非是非ー!と私達を歓迎してくれた。

次の日、神絵師が一人暮らししているマンションに私とB子はお邪魔した。
作業人数は主催4人と主催の友人2人と私とB子、合計8人でシールラリーの台紙をそろえたり、景品の袋詰め等の作業を行なった。
みんなでわいわい、ジャンルの話、カプの話、それから自分の話なんかもしたりしながら作業をした。
休憩の時は神絵師がカントリーマアムを出してくれた。
カントリーマアムと午後茶は合うな、買ってきといてよかったと思いながら来る途中のコンビニで自分で買った午後茶を飲んだ。
主催を含め、年齢はだいたいみんな20代半ばから後半で全員社会人だった。
神絵師以外はみんな会社勤めで空いている時間に同人活動やネットに落書きをしている感じで、神絵師は別名義でイラストの仕事をしているとの事だった。
神絵師はプロだったのか、と私とB子は納得していた。

主催の一人が、そろそろお昼にしようというので、近所のおしゃれなカフェにみんなでランチをしに行く事になった。
神絵師の案内で訪れたそのカフェは落ち着いていておしゃれな雰囲気で、料理もどれも美味しそうだった。
私はパスタランチを頼んだ。
お会計の時、そう言えば給料日前だった!お財布の中身を見てかなり慌てたが、なんとかぎりぎり足りたのでホッとした。

午後もアニメのあのシーンが最高だとか、あの声優のあの発音はやばかったねだとかわいわい話ながら作業をした。
おやつに、と神絵師はカントリーマアムを出してくれた。
私は自分で買った午後茶を飲みながらいただいた。

私とB子は一日そんな感じで作業の手伝いをした。
帰り際に主催web担当が「明日、シールラリーの景品のラインナップを発表しますよ」と教えてくれた。
アンソロのメンバーは既にプチのサイトで公表されていたが、シールラリーの景品のラインナップはまだ全て未発表だった為、明日が初公開になる。
ラインナップを見て、私が担当したお皿を欲しいと思ってくれる人がいますように…当った人がハズレだと思いませんように…
私はとにかく祈った。


翌日、私は個人誌の原稿の仕上げをやっていた。
するとTLが一斉に勢い良く流れだす。
シールラリーの景品のラインナップが発表されたのだ。
私はドキドキしながらカプ名やプチオンリー名で少しエゴサーチしてみた。
「景品どれもかわいい」「ハズレなしじゃんこんなの」「全部欲しい」みたいなツイートを見かけて一応ホッとした。
私もシールラリー参加したい、でもとりあえず個人誌を脱稿しなければ、と原稿に戻ろうとした時、目を疑った。


「景品の一部は○時から本部で頒布も行ないます!」

シールラリーの景品を抽選だけでなく、実際に売るというのだ。
確実に欲しい人は買う事もできますよ、というもの。
そしてその販売景品のラインナップに

私が担当したお皿も入っていた。


そんな話一言も聞いていない。
依頼のメールも慌てて確認したが勿論頒布も行なうなんてどこにも書いていなかった。

TLは景品が買える、嬉しいと沸き上がっていた。
それもそうだ、神絵師の景品が確実に手に入るのだから。
誰も私の皿が買えて嬉しい等とは言っていない。

どういう事だ、主催に問い合わせた方がいい?
私の絵のグッズなんて抽選で当ればラッキーと思ってくれるかもしれないが、わざわざお金出してまで買ってくれる人なんているのか?
等グルグル考えたが、とりあえず締切りも迫っている個人誌を脱稿しなければ…と一旦景品の事は忘れる事にした。


原稿の単純作業中や通勤時間中、私は考えた。
プチオンリー当日まであと数日。
きっと主催は雑務でめちゃくちゃ忙しいだろう。
そんな中、自分の景品を販売中止を求めて雑務を増やし、自分も楽しみにしているプチオンリー当日に何か支障を来す事になるとしたらそれはとても忍びない。
また、販売景品の変更のお知らせ等出たら、何も知らずにプチオンリーを楽しみにしている人達も何かあったのか?と思うかもしれない、そんな水を指すような真似はしたくない。
一応、私の力出せるものは出して自分で納得できるデータを提出した。
それを見て主催が「販売景品にしよう」と判断したのなら、それはもう仕方ない。
主催も考えあっての事だろうと思うし、万が一売れ残っても私の責任ではない…
そもそももう既に販売する位在庫を用意しているのだろうから、イベントまであと数日の今、ごちゃごちゃ言ってもどうしようもないのだ。

景品の絵の事は、もう私の手を離れた物だと思い忘れる事にした。
その時は一応まだプチオンリーは楽しみだった。


プチオンリー当日、私自身の新刊も無事に出て頒布する事ができた。
プチオンリーの効果で自カプの本が沢山発行され、戦利品を抱えて私は満たされた気持ちでいっぱいだった。
執筆したアンソロが気になったので早く見てみたかったが、主催も忙しいのかイベント開始前までに持ってきてくれなかった。(アンソロ執筆を受けた時にアンソロの受取はイベント当日スペースに持ってきてもらうを選択していた)
まあ当日はめちゃくちゃ忙しいだろうし間に合わなかったんだろうな…と思っていたが、昼過ぎになっても持ってきてくれない。
もしかして忘れられてる?と心配になって同じアンソロに参加してるB子に聞いてみると、B子の所にもなかなか持ってきてくれる様子がなかったから挨拶がてらプチオンリーの本部に行って貰ってきちゃった!とB子は話した。

(もしかして、本部受取と私勘違いしちゃってたのかなー)などと考えながら、私も挨拶がてら本部に向かった。

本部はアンソロやグッズを頒布する人、シールラリーの対応をする人など主催やスタッフも含めとても混雑していたが、そんな中手が空いてる主催が一人いたので声をかけた。(自由に動ける流動要員だったのだろうか)
ちなみに神絵師はどなたかと挨拶だろうか、話をしていた。
その後ろに神絵師に挨拶待ちの人が数名並んでいた。

空いてる主催に○○です、と声をかけると
「あー!○○さん!すいません、バタバタしててアンソロとお皿、持っていけなくて…!」
とすぐ私の分のアンソロと景品のお皿等をひとまとめにした紙袋を持ってきてくれた。
私も
「朝スペースがバタバタしててこんな時間なんですが差し入れです」
と主催の人数分用意していた差し入れを渡した。
本当はアンソロを持ってきて貰った時に渡そうと思っていたのでこんなお昼過ぎに差し入れを渡してしまって、申し訳ないと思った。
差し入れは、プチオンリーを開催してくれた感謝もあって、ちょっと奮発した物を用意した。
できたばかりの商業施設の中に入っている当時テレビや雑誌でもよく取り上げられていたお菓子のセットだった。
プチオンリーを主催するというのはとても大変な事だと思う。
しかも今回は結構規模の大きいプチだ。作業もたくさんあっただろう。
でもそのおかげで、たくさん自カプの本が買えた。
自カプが賑わっている。本当にありがたい。
心から感謝していたので、そのお礼の気持ちも兼ねて差し入れを用意した。
主催の一人はみんなに渡しておきますね、と受け取ってくれた。


自分のスペースに戻ってさっそくアンソロをパラパラめくった。
どこをめくっても自カプだ、すばらしい。
景品のお皿も、結構かわいく完成していた。
紙袋の中には主催からのお礼のお手紙と、菓子折りが入っていた。
それはちゃんと包装紙でくるまれたちゃんとした菓子折りで、今回はさすがにカントリーマアムじゃないんだな、と正直思った。
その様子を隣で見ていたB子が「景品の分のお礼が入ってなくない?」
と指摘してきた。
聞くと、アンソロしか参加していないB子とお礼はまったく一緒だという。
まじか…もしかして紙袋に入れ忘れちゃったのかな とも思ったが、主催に「景品の分のお礼が入ってなかったけど?」なんて気軽に言えるような仲でもない。
しかもよく考えると、景品のイラスト依頼のメールには謝礼の事は一切書かれていなかったような気がする。
完成品がお礼ということか?原価も高いし… でも普通は…
そこまで考えて、なんだかこれ以上考えると闇が広がる気がして、思考を止めた。
楽しいプチオンリーだったんだからいいじゃないか、第一お礼の為に依頼を受けたんじゃないし。そう思った。


イベントも無事終わり、事前に主催に誘われていたアフターに私とB子は参加した。
パーティー会場を貸し切り、主催やプチオンリースタッフ、アンソロや景品に絵を提供した人達、その他にも主催の友達やツイッターが繋がっている人達数十人単位でのアフターだ。
自カプをイメージしたケーキ等を振る舞われ、とても豪華なアフターだった。
そこで知り合った方と自カプの話をあーでもないこーでもないと話したり、今後の展開を勝手に予想して萌え上がっていた。
イベント中は主催全員に挨拶できなかったのでアフター会場で主催全員に挨拶に回った。
主催お疲れさまでした、素敵なプチオンリーありがとうございましたみたいな事を伝えた。
でも誰も私の差し入れの事に対して何も言葉はなかった。
ちゃんと配ってくれたのだろうか?私の感謝の気持ちは伝わってるのだろうか?
とちょっと心配になったが、イベント中はたくさん差し入れも貰っただろうし、誰からの差し入れなどまだ確認できてないんだろうな、と思った。

神絵師はアフターでも人気者でここでも挨拶待ちの列ができていた。
私も列に並び順番を待って神絵師に挨拶をした。
神絵師は「○○さん!アンソロやお皿、作業まで手伝ってくださってありがとうございました!」と丁寧にお礼を言ってくれた。
それから少し世間話をしていたが、私が心配していた件について神絵師はこう言った。

「そういえば、景品のお皿、少し余っちゃったんでよかったら次のイベントで委託しません?」

やっぱり余ってしまったのか…
私は自分の力量不足にとても申し訳なく思って、次のイベントでの委託も了承した。
神絵師もアンソロの在庫などを頒布するためにサークル参加するらしい。
でもやはり描き手のスペースにも置いてあった方が、○○さんのファンも手に取りやすいかと思って、神絵師はそう言った。

正直いつも私の本を買ってくれる層にグッズまで手に取ってくれる人がいるのか不明だったが、それもそうだなと思ってその時は納得した。
お皿は当日朝、主催が持ってきてくれるとの事だった。
アフターの参加費は主催の友人もスタッフもアンソロメンバーも全員きっちり7000円だった。さすが豪華なアフターは料理の内容も参加費も違うなと思った。


次のイベント当日。
主催の一人がお皿の在庫いくつかと、差し入れですと大袋のカントリーマアムとおせんべいを小分けしたものをくれた。
心配していたが、私のスペースでもお皿を手に取ってくれる人が結構いて預かった分は完売した。
これで自分もお役御免だな、とホッとしながらその日のイベントは終了した。
売上を渡しにいくと、神絵師は
「ありがとうございます〜!やはり○○さんのスペースに置いてあったほうが皆さん手に取りやすいみたいですね、うちのスペースではなかなか捌けなくて…なので、次のイベントでも委託しませんか〜?」
と打診してきた。

まじかよ…まだ在庫あったのか…
なんとなく、できれば早くこのお皿から手を引きたいと思うようになってきた。
でも私が描いたグッズだしなあ…と次回も委託するのを了承した。

次のイベントで預かった分は完売ではないが一応お皿は捌けた。
売上0だと申し訳ないのでホッとした。
その日はB子がスペースで売り子を手伝ってくれた。
イベントを申し込むのを忘れたらしい。
B子の本を委託するかわりに売り子を手伝ってくれ、委託ありがとうといって自カプがよくモチーフとして表現する花があり、その花がついたの見た目もかわいいお菓子の詰め合せを差し入れにくれた。
B子のそういう差し入れのチョイスはほんとセンスが良くて素晴らしいなと思った。
別に売り子手伝ってくれてるし、気を遣わなくてええんやでと言ったが私は素直に嬉しかった。
「そういえば今回はカントリーマアムの差し入れないね」とB子は冗談ぽく言った。


その日の売上と売れ残ったお皿を持って主催のスペースに行った。
神絵師はお礼を言ってくれ、そう言えば、と机の下からダンボール箱をひっぱり出してきた。

「よければ○○さん、この在庫預かりません〜?やっぱり○○さんのスペースじゃないと捌けないみたいで…これをずっと搬出入するのも宅配代かかるし、○○さんの所で預かっていただけると助かります〜!」



??

???

はあ?と私は思った。


このダンボールいっぱいのお皿を、うちで管理しろ、なくなるまでうちで委託しろという事か?
そのイベント毎に全部を搬入しないにしても、かさばるグッズを私の方が搬入しなきゃいけないのか?その宅配代は?
「宅配代もかかるし」という言葉からするに出してくれない?
そもそもスペース代はタダじゃないんだが、今回も前回も委託分の売上そのまま持っていってるし、これからもきっと委託しても特にスペース代一部払ってくれるわけじゃないよね?
お礼だって前回のカントリーマアムだけだ。今回は特に気持ちも何もない。
私はプチオンリーの主催でもスタッフでも何でもないんだが?
自宅で管理する義務も、自分のスペースで頒布する義務も何も無い。

それにこんなにたくさんお皿の在庫があるなんて聞いてない。
販売するなんて聞いてない。
販売する用のグッズだと知っていたら断っていた。
抽選の景品用だから引き受けたのだ。

しかもなんだその軽いノリ。
私はあなたの信者でもなんでもないからそんな軽いノリで頼まれても二つ返事で勿論です!なんて言わねえよ。


私が手伝えるのはここまでだと思った。
主催はとても無礼な人達だな、そう思った。
この人達に関わるのもここまでだと思った。


「ウチ部屋狭くて〜管理するスペースなくて〜、あと次イベントいつでるかまだ未定で〜」
と軽いノリで頼まれたので、私も軽いノリで断った。
神絵師はえっ という顔をしたが、
「そうですよね〜、また何かあったら相談するかもしれないんですが〜!
と話は終わった。

主催メンバーとはそれ以降交流する事はなかった。
主催の無礼に腹も立ったが、主催に対してそれを非難する事はしなかった。
私はこのカプが本当に大好きで、これからもこのカプで活動を続けたかった。
カプの中心となる人達にたてついて何をされるか、というわけではないが、何も知らない人達にあそこは仲が悪い、ギスギスしているクラスタだなとか思われたくなかった。
何事もなかったように本をまた出したかった。
ツイッターも繋がってる人はそのままにした。
プチオンリー前もそうだったように、繋がってるけど特に絡まないという状態に戻っただけだ。
このモヤモヤした気持ちを私の中に留めておけば、プチオンリーの楽しい気持ちだけ残る。

お皿の事はどうなったかは知らない。
もともと主催メンバーは神絵師をふくめそこまで積極的に同人活動をするほうではなかった。
プチオンリーが終わって力が抜けたのか、ネットに絵を上げているのはよく見かけたが、イベントにサークル参加をしている様子はあまりなかった。
お皿は多分、処分されたんだろうなと思った。
私の力量がもっとあれば、こんな事にならなかっただろうにな、ごめんね
とお皿に対して申し訳なく思った。




それでまあ言うけど、言ってしまうけど、


プチオンリーの主催の差し入れがカントリーマアムってないだろ!!


カントリーマアムは好きだよ!おばあちゃんちにあったら嬉しいお菓子だよ!
午後茶と一緒に食べたいよ!
でもこれからアンソロよろしくお願いしますっていう人達に対して、大袋のカントリーマアムを小分けにして差し入れするって…

十代の学生かよ!!!!!!!アホか!!!!!!!!!

しかも差し入れとしてあんまり良しとされていない、大袋のお菓子を小分けにして渡すっていうのをやってみせる主催ってどうなの…

大袋のお菓子は、外袋にしか賞味期限がついていない為、小分けにして渡すとそのお菓子の賞味期限がいつかわからないのだ。
まさかわざわざ賞味期限切れの物を渡してくる人はいないと思うが、イベントでの差し入れとしても控えたほうがいい言われている。

そう言われてはいるが、イベントでは正直よくそういった大袋のお菓子を小分けにした差し入れを貰う事がある。
大体が若い方からの差し入れだった。

イベントでの差し入れとして賛成はされないものだが、それはそれで私は嬉しかった。
ツイッターピクシブを見て、絵が好きだという気持ちでスペースまで寄ってくれた、本を買ってくれた、それだけでも嬉しいのにわざわざお金をかけて差し入れまでくれる。
こんなありがたい事があるだろうか。
差し入れの内容はともかく、私はいつもそれに感謝していた。

しかし、プチオンリー主催からの差し入れになると別だ。
これから時間を割いてアンソロの原稿をしてくれるという人に、グッズの絵を描いてくれるという人に賞味期限がいつかわからないカントリーマアム数個渡すだけってそれはどうなのか?

参加した事はないが、男性向けのアンソロ等はお金の謝礼が出ると聞いた。
でもその文化は女性向けにはない。
はっきりお金の対価はないが、女性向けのアンソロ等では菓子折り等を渡したり、主催によってはクオカードのような物を添えてくれたりする。
お礼の気持ちを物で表現するのだ。
アンソロのお礼は最初の依頼にも明記されてたように、菓子折りが入っていた。
ここでもカントリーマアムだったらさすがに炎上しただろうが、そこはテンプレ通りちゃんとした菓子折りだった。

しかし景品グッズに対するお礼や、主催の家での作業の手伝い、委託した分のお礼はカントリーマアム数個だった。

私だったら、これからアンソロに描いてくれるという人に対しては事前のイベントでちょっとした菓子折りを持って挨拶に行く。
原稿よろしくお願いします、貴重な時間をいただきます。という気持ちが表現できる物を選んで持って行く。
以前アンソロを主催した時はそうした。
プチオンリーを主催した事はないが、もしもアンソロと別にグッズのイラストも手伝ってくれたらアンソロ分とは別にお礼も用意する。
作業を手伝ってくれたら、お茶請けとは別に飲み物も用意するし、お昼代も負担する。
余裕があればアフター代も手伝ってくれた人全額負担、とまではいかなくても参加費割引でお誘いすると思う。
残った在庫の委託をお願いするならそれ毎に毎回お礼を兼ねた菓子折りなど差し入れする。必要ならば委託代を申し出る。

勿論感謝の気持ちを口でも伝えるが、言葉だけだったらなんとでも言える。
時間を割いてくれてありがとう、その気持ちを物で表現する。

上記にあげたお礼を全部実行しろとは言わない。
この気になった部分、どれかひとつでも礼を尽くしてくれれば、きっとここまでモヤモヤする事はなかった。

お礼が金銭的に無理だったらその事をちゃんと告げる。
「お礼は今回難しいけど、そのかわり次何かあったら呼んで!必ず駆けつけるから」
そう言うと思う。
それでいいのに、と思う。



もう時効だと思い、B子にこのプチオンリーの話をした。
当時はB子が神絵師の大ファンだったと知っていたので、好きな人を批判するような事を言いたくなかったのだ。
神絵師も別ジャンルに移動したようで最近は交流もないようだし、話し手も大丈夫かなと思った。
するB子も
「それ思った〜!作業手伝いに行ったじゃん、茶ぐらい出せよって思った!」
と笑いながら言った。

きっと主催者みんな、同人経験がそこまでなかったんだろうなって思う。
だから参考にできるようなテンプレが沢山あるアンソロの対応は完璧でも、他の事に対しては必死で、おざなりになってしまったんだな、と思った。
それにしても主催全員社会人なのだから考えもつくだろとも思ったが、プチオンリー自体は成功したし、大半の人にとっては楽しい思い出だし、みんな若かった!でいいやと思う事にした。


私自身はもう、無償でお手伝いしてもいいと思える身内以外からそういった執筆依頼は断ることにした。
身内だったら何があっても無償でも協力できる。
それは向こうも何かあったら無償で協力してくれると知っているからだ。
でも私の身内にタダ働きさせるような友達は誰もいない。
必ず何らかの形で礼を尽くしてくれる。


この気持ちを私の中に留めておけば、と書いたがあれは嘘だ。
やっぱりモヤモヤしたし、主催メンバーもほとんど自カプからジャンル移動したみたいだし、時効かなと思った。
この話は当時プチオンリーに参加していた人でも自カプのプチオンリーだと分からないと思う。
でも主催が読めばバレるかな、とも思った。
バレてもいいやと思っている。


ツイッターで神絵師が別ジャンルでプチオンリーを開催する事を知った。

今度はアンソロ参加者にカントリーマアムを配り歩くのは辞めなよって気付いてくれるのならバレてもいいや。


あ〜
長々と書いたけどほんと、ほんと

カントリーマアムはなかったよなあ…

美味しいけど!!!!